feria-feriale
イタリア語の"feria"は不思議な単語である。普通は複数形(ferie)で用いられ、「休暇」を意味する。例えば、"essere in ferie"は「休暇中である」という意味だし、"prendersi le ferie"といえば「休暇を取る」という意味になる。
その一方で、"feria"が形容詞化された"feriale"は「平日の」という意味になる。"giorni feriali"は平日のことである。同じ語源の言葉でありながら、正反対の意味を持っているのである。
辞書を引いてみるとますます混乱する。小学館の伊和中辞典によれば、"feria"の意味は二つあり、
1. [カトリック](土曜、日曜を除いた)平日
2. [複数形で]休暇、休み、休業期間、休会期間
となっている。"feria"という言葉自体が相反する二つの意味を持っているのである。形容詞の"feriale"も同じで、
1. 平日の;仕事をする、就労の
2. [文]祭日の
となっている。現代イタリア語では、名詞"feria"は2.の意味で、形容詞"feriale"は1.の意味で用いられることが多いが、本来はどちらも「休日」、「平日」両方の意味を持っているのである。
イタリア語の辞書や語源辞典を読んでみると、歴史的経緯から"feria"が二つの正反対の意味を持つようになったことがわかる(*自分でもまだきちんと理解できていないところがあるので突っ込みがあったらぜひお願いします)。
イタリア語の"feria"はラテン語の"feriae"から派生している。"feriae"は常に複数形で、宗教的な祭日を意味する言葉だった。もともとは古代ローマにおいて公的および私的な信仰に捧げられた日のことを示していたのである。このような宗教的儀式の行われる日には法廷を開いたり、民会を開くことは禁止されていた。このため、現代イタリア語の"ferie"(こちらも複数形)も、「休日」、「仕事をしない日」という意味で用いられている。
では、なぜ"feria"が「平日」という正反対の意味も持つようになったかというと、これはこの単語がキリスト教に取り込まれたときの用法に起因しているようである。
キリスト教以前のローマでは、一週間のそれぞれの日にローマ神話の神々の名前を充てていたが、キリスト教はこのような異教の神々に由来するこうした呼称を嫌い、新しい曜日の名前を用いるようになった。土曜日にはユダヤ教の安息日にあたるsabbatum(sabbata)をそのまま用い、キリストの復活を祝う日曜日が主日(dies Domini)となったが、それ以外の主日や特別な祝日に当たらない、聖人を祝う日がferiaと呼ばれたようである。一週間は日曜日から始まるため(ただし日曜日は「主日」であるためferiaとは呼ばれない)、月曜日が"feria secunda"(第二のferia)、火曜日が"feria tertia"(第三のferia)…金曜日が"feria sexta"(第六のferia)となったのである。(月曜日が第一ではなく第二のferiaなのは、ユダヤ教では日曜日から順番に第一日、第二日…と呼ばれていたのが関係しているのかもしれない)。これが、土曜日、日曜日以外の日=平日として、現在の「平日」という意味になり、イタリア語では特に、形容詞形である"feriale"が"giorni feriali"(平日)という形で用いられ"giorni festivi"(休日)と対置されるようになった。
ちなみに、実際には、異教の神々に由来する曜日の名があまりにも人々の間で普及していたため、カトリックの多くの国々(後にプロテスタントになった国々を含む)では、このような新しい呼称は定着しなかった。イタリア語でいえば、土曜日(sabato)と日曜日(domenica)は教会の定めた名前に由来するが、月曜日(lunedì<Luna[ルナ]、火曜日(martedì<Marte[マルス])、水曜日(mercoledì<Mercurio[メルクリウス])、木曜日(giovedì<Giove[ユピテル])、金曜日(venerdì<Venere[ウェヌス])はローマ神話の神々に由来する名前が残った。英語にいたっては、全ての日が異教の神々から派生した名前である。一方、正教会に属するスラブ系の国々やギリシャと、カトリック圏でもポルトガルでは、曜日を数字で呼ぶ名称が現在でも用いられている。
もっとも、現代イタリア語では"feria"も"feriale"も特定の用法でしか用いられない言葉なので、混乱することはあまりない。カトリック用語の「平日」としての"feria"を日常耳にすることはほとんどなく、たいていの場合、複数形のferieが「休暇」の意味で用いられる。
反対に、形容詞"feriale"は普通「平日の」という意味で用いられるが、一番多く目にするのはバスや電車の時刻表、店の営業時間などで"giorni feriali"(平日)である。この場合、すぐ隣には"giorni festivi"「日曜祝日」とあるので、"feriale"の意味を知らなくてもこれが平日を意味することは容易に推測できる。他方、"feriale"の「休日の」という意味では、"lavoro feriale"(休日勤務、もしくはそれに伴う休日勤務手当)という用法があるが、用例は限られており、通常「休日の」と言う場合には"festivo"を用いる。紛らわしい単語ではあるが、一応の棲み分けは行われているのである。
ただし、これはあくまでもイタリア語の話である。例えばフランス語ではこのような意味のねじれはなく"férié"は単に"férie"(ラテン語の"feria"から派生した「休日」の意味)の形容詞として用いられるので、"jours fériés"は「休日」の意味になる。ややこしい。














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